■「頑張らない」から上手くいく -講談社-
生活感が薄まるということは、生命力が薄まっていくということでもあります。不安定が当たり前の世界で、物事を定めようとするから無理が生じるのです
学業が優秀ということは、
勉学の近道を知っているということです。
しかし学業だけの近道は社会に出てからそれほど役に立ちません。
昔は勉強できない子が落ちこぼれと言われていましたが、
今の時代は勉強ができても落ちこぼれてしまう人が実際にたくさんいます。
望ましいのは、
勉強の近道だけでなく、
人間関係の近道、
社会で生きていく上での近道を知っていくとともに、
時には遠回りすることも大切なんだということを体で理解していくことです。
by. 桜井章一氏
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知識ばかりたくさん詰め込んでも、
知恵がなければなんの役にも立ちません。
そして知恵というのは遠回りすることで見えてくるものでもあるのです。
何事にも近道を知る感覚を持っているのは人としての強みです。
楽をしようとして近道をさらに急ぐあまり、
犯罪に手を染めてしまう企業や人間は後を絶ちません。
by. 桜井章一氏
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世界全体が、
「狡賢いほうが勝つ」社会を、
あるいはシステムを作っているのです。
でも、狡賢いことをしている人には必ずなんらかのしっぺ返しが来ます。
政治も経済も、
現代社会はすべて狡賢さで成り立っています。
狡賢い大人たちが「いい子になりなさい」
と育てるわけですから、
狡賢い子どもが増えて当然です。
by. 桜井章一氏
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この狡賢さの連鎖は相当に根が深く、
取り除くのは容易ではありません。
子どもに「いい子になりなさい」
と言う前に、
大人たちは自分自身の狡賢さに気づき、
その立ち位置から我を省みて声を発するべきだと思います。
私自身は目標というものを持ったことがないし、
そこに重要な意味も感じません。
目標は持ちたければ持てばいいし、
ないのならないままで構わない。
by. 桜井章一氏
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だから子どもが目標を持つにしても、
それが自発的なものなら問題ありませんが、
基本的には親の側から与えたり、
指し示したりするものではないと思います。
そういう意味で、
目標というのはあくまでも本人が見つけていくものです。
やりたいこと、したいこと、
好きなこと、そういったものすべては、
人生のなかで本人が見つけていくものなのです。
基本的には目標もやりたいことも自分で見つけていくことが大切です。
by. 桜井章一氏
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自分で見つける作業を繰り返すなかで、
子どもたちは面白さを知り、
自覚が芽ばえ、
やがて自立という形で表れてきます。
100点というのは、
ミスのない完璧な状態です。
しかし人間はミスをする生き物ですから、
テストだけならともかく、
その生きざまにおいても100点を求めていたらそれこそ行き詰まってしまいます。
人間は、「生きること」それ自体がすでに才能であり、
力です。
by. 桜井章一氏
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「生きているだけで十分」
「生きていてくれてありがとう」、
そんな気持ちを持って私は子どもたちと接していました。
麻雀の上手い下手も関係なく
「こんな俺と一緒にいてくれてありがとう」、
そんな気持ちで彼らと毎日接しています。
完璧を求める「100点主義」より、
「生きているだけでいいんだよ」
という育て方のほうが当然ながら子どもは安心します。
「人に勝つ」=「成功」
という刺激になれてしまうと、
より大きな刺激を欲するようになります。
by. 桜井章一氏
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金で買えるものは世の中にたくさんありますが、
現代社会では刺激すらも金で買うことができます。
ここにひとりの人間の人生を大きく曲げてしまう原因が秘められているのです。
せめて「80点でいいよ」「70点でいいよ」
と徐々にハードルを下げていってみてはどうでしょう。
そうやってバランスをとりながら子どもを育てていくことも、
親の大事な務めなのだと思います。
by. 桜井章一氏
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やる気のない子をやる気にさせるには、
私の場合、その子をじっくりと観察します。
まず、その子の好きなこと、
嫌いなことをしっかりと見極めます。
そして好きなことがなんなのか分かったら、
その好きなことを好きなだけやらせてあげるのです。
この時、好きなことを中途半端にやらせるのはよくありません。
by. 桜井章一氏
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私はその好きなことにとことん付き合ってあげるようにしています。
中途半端に好きなことをやらせるのは子どもの心に不満を残すだけです。
好きなことを十分にできれば子どもはそこで満足します。
その満足した瞬間に
「こんなこともあるんだけどどう?」
という風に、
私がその子を向けたい方向に少しずつ導いていくのです。
by. 桜井章一氏
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その子が一体何が好きなのか?
それを見極めるには大人の観察力が求められます。
観察力とはいかに多くのことに気づくかということです。
気づきを得るために必要な感じる力は、
情報や知識に頼っているようでは磨かれません。
現場で起こっていることの全体を、
五感を通じて感じることが多くの気づきを生み、
結果として子どもの理解にもつながるのです。
by. 桜井章一氏
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パソコンや携帯電話にどっぷり浸かっているからといって、
それを依存症とひとくくりにしていいのかどうか、
甚だ疑問です。
もはやパソコンや携帯電話というのは、
人間社会と切っても切れない関係にあるといえます。
お金に依存している人、
仕事に依存している人、
権力に依存している人、
いろんな依存症の人がいます。
このように、
依存症というものは時代や社会の形が変われば依存症ではなくなります。
by. 桜井章一氏
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準備があるから実行できる、
後始末をきちんとしなければ次の準備ができない。
準備・実行・後始末をきちんとこなすことで、
日常の生活が円を描くように潤滑に回っていくのです。
強制的に何かさせると、
やらされているほうは
「いやいや」「渋々」です。
それでは何も身につきません。
by. 桜井章一氏
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便利になるのはいいのですが、
電化製品の進化とともに、
かつてあった生活感というものが希薄になっています。
生活感が薄まれば日々の暮らしは味気のないものになり、
有り難いという感謝の気持ちも起こりません。
何より、生活感は生命力と密接なつながりがありますから、
生活感が薄まるということは、
生命力が薄まっていくということでもあります。
手間暇惜しまずに、
「生活とはこういうものなんだ」
ということを親がまずしっかりと見せる。
仕事も怠らず、
火事も手を抜かず、
そういった親の後ろ姿を見て子どもは生活感を理解します。
すべてが希薄になってしまった現代社会で親子のつながりを濃くしていくには、
生活感を取り戻すことが重要なのです。
by. 桜井章一氏
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人間は定まったものに安心や安全を見出します。
世の中の常識、ルール、
そういった定められたものすべては、
そんな人間の性から派生したものです。
しかしこの世の中で「定まったもの」
というのは少数派です。
この世の中は「定まっていないもの」
が大半を占めています。
by. 桜井章一氏
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人も、モノも、自然も、
日々揺れ動いています。
そんな不安定が当たり前の世界で、
物事を定めようとするから無理が生じるのです。
「定まったもの」が当たり前の感覚でいると、
何か変化が起きる度にびっくりしたり、
悩んだりすることになります。
それでは目の前で起こる変化にも対応できなくなってしまいます。
by. 桜井章一氏
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「定まっていないもの」が当たり前と思っていれば、
世の中で起きているさまざまな変化もそれほど問題ではなくなります。
定まらないものの中から、
一人ひとりが何かを見つけていく。
定まったものを追求し、
得られるのは「知識」です。
定まらないものを追求し、
自分から何かをつかんでいくこと「知恵」と言います。
それこそが定まっていない世の中を生きていく術となる、
あなただけの知恵なのです。
by. 桜井章一氏
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