■雀鬼と陽明 ~桜井章一に学ぶ心の鍛え方~ -三五館-
自分をきれいに掃除しておけば、むだな要素をはぶいていけば、相手のことが見えてくるのです。麻雀やってて勝つのがわけないのは、相手の心の中に分裂症状を起こさせればいいんです
始まってから分かったことだが、
約束にもかかわらず、
帝王側から見番という名目の大男が一人部屋の片隅に坐り込んでいた。
名目は中立であっても、
桜井たちにとっては心理的にいっても大きなマイナス要因で、
帝王側はやりたい放題ということを意味していた。
一局目から桜井は、
帝王と長男の英の二人の会話をキャッチすることに専念した。
出来るだけ早いうちに、
なにげない会話の中に含まれるサインを読み取らなくてはならないのだ。
by. 桜井章一氏
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かといって、
相手を読むことにベストを尽くしている、
というのではない。
素人の場合、
必要以上に相手を読んでしまい、
すべてが危険牌に見えてしまい、
弱気を引き起こし、
不利になってしまうのである。
孫子の言葉にこうある。
「彼を知らずして己を知らば一勝一負す」
by. 桜井章一氏
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「むだな動きや思考をなくして、
自分が早くなれば相手のことが見えるわけです。
みんなはそうじゃなくて、
相手のことを先に読もうとするから、
読めないわけです。
自分をきれいに掃除しておけば、
むだな要素をはぶいていけば、
相手のことが見えてくるのです。
常識からすると、
まず相手のことを全部読めばいいじゃないかと、
人のことが分かればいいじゃないかと、
そこから始まってしまうんです。
自分ののことをきちんと分かるようにして、
はじめて人のことが分かるんです」
by. 桜井章一氏
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「三秒以上かかるのは、
考えてるんじゃなくて、
迷ってるんだ!」
「ツモって切る動作が、
一つの同じ動作なのです。
ツモって返す動作が一致していないと分裂してくるんです。
ツモるまでに二秒でも、
今度は返すときに五秒かかるとか、
そういう時間差の分裂が起こってくるんです。」
by. 桜井章一氏
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「いつも同じリズムというのは、
ツモって返す動作が一緒だから同じリズムなんです。
そこに人間の思考が入るから狂ってくるんです。
ツモるまでは、
思考がないわけです。
ツモった後に、
知識や情報の無駄が入り込むから、
切るときに遅くなるんです」
by. 桜井章一氏
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帝王組が圧勝する中で、
桜井は、彼等の点棒やリーチ牌の位置(置き方)、
指や体の動きのすべてのデータを蓄積していた。
そして、それらのデータから、
その中に潜在する法則(帝王側の暗号)
を読み取る作業を試みていた。
桜井の脳は、
さながらコンピュータと化していた。
by. 桜井章一氏
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暗号解読の作業も、
次第に終わりに近づいていたが、
隣の部屋でこちらの対局を見つめている三男の存在が気になっていた。
桜井のただならぬ負け方に、
何かしら気づいているようすだった。
帝王のそれは、
<意志>の麻雀であった。
そこが桜井の麻雀との決定的な違いであった。
by. 桜井章一氏
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桜井は、牌の<流れ>に逆らわないが、
帝王は<意志>でもって流れに逆らった。
逆らう麻雀は、
一度噛み合わなくなると、
取り返しのつかない、
修正困難に陥ってしまうのだ。
もう帝王側のローズは読み切っていた。
<三男は、俺の力を読み取っていた。
そのうえで、今回は自分の出番を避けたのに違いない。
この男はもう戻って来ないだろう>
by. 桜井章一氏
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桜井は、三男との対戦をできるだけ遅くしたくて、
忠の技を早目に潰さず、
引っ張るだけ引っ張ってきていたのだ。
見番の大男は、
こちらを見ながらも酒を飲んでいた。
たぶん、麻雀を知らないに違いない。
桜井は、勝利を確信した。
帝王組のサインは筒抜けで、
桜井組のローズは見事に決まった。
by. 桜井章一氏
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天運をものにしつつあった桜井は、
忠の裏技は見切っていたので、
さらにその裏をかいて、
それから一〇回戦ほど連勝を続けた。
忠は持てるすべての技を駆使したものの、
ますます焦るだけで、
もう頭の中は真っ白になっていた。
帝王は、冷静さは失ってはいなかったが、
ジゴロの松が和了り始めた頃から、
言葉遣いや洗牌や先ヅモにも、
乱れが見えはじめていた。
by. 桜井章一氏
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「麻雀やってて勝つのがわけないのは、
相手の心の中に分裂症状を起こさせればいいんです。
分裂させる前に、
相手に読みをやらせるわけです。
麻雀では読みですが、
日常生活では考えるということですね。
読みをやると、
人間というのはどんどん分裂していくんです。
・・・(中略)・・・
<揺れない心>というのは、
自分を分裂させないということなんです」
by. 桜井章一氏
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<忠は死んでいたが、
帝王はまだ死んだわけではない。
まだ帰るわけには行かないだろう>
どうやら帝王がよみがえりつつあった。
忠も、少しだけ息を吹き返しつつあった。
桜井は、ジゴロの松と交替した。
ところがである。
by. 桜井章一氏
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シルクは桜井のローズに気づかないし、
桜井に断りもなく勝手な動きをしはじめていた。
シルクが帝王に放銃(ふりこみ)したときに、
桜井はシルクを見限った。
桜井のダブリーの逆転劇をきっかけに、
帝王側は乱れはじめ、
シルクは我に返っていあた。
それから間もなくだった。
by. 桜井章一氏
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シルクが和了ったとき、
帝王はそのまま後ろに倒れ込んだ。
そして、
「もうやめだっ」
と両手で顔を覆って、
怒鳴るように、
泣くようにいった。
そのときの帝王の手牌は、
「国士無双」の一三面待ちだった。
by. 桜井章一氏
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