■男の器 ―――常識に囚われない生き方 -角川oneテーマ21-
それは、この世界が絶え間なく変化し続け、
定まることがないからだ。
それは人が生きている根拠など何もないということだ。
人の精神はそんな根拠の無さに耐えられない。
by. 桜井章一氏
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だからこそ、生きていくなかで一つひとつ確信を得て、
根拠がほんとはないということに上手く目をつぶれるよう努力をするのである。
そんな確信を与えてくれる大きなものは、
親や先生によってなされる教育である。
それによって空気を吸うのと同じような感覚でさまざまな分野の常識が刷り込まれ、
生きていく大きな土台になっていく。
by. 桜井章一氏
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また公式や法則といった概念をもつ学問に触れることで、
この世界には見えない根拠があるのだと確信してしまうのである。
だが、公式や法則はひとつの現象を切り取って、
とりあえずこうであるといっているにすぎない。
現実の世界は公式や法則が相対的にしか通用しない、
混沌と変化し続ける世界である。
by. 桜井章一氏
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そうやって考えていくと、
定まったものを追求するのが知識といえる。
それとは反対に定まらないものを追求するのが智恵であろう。
by. 桜井章一氏
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知識というものは確信を得る絶好の道具である。
それゆえに知識で武装した人は、
たいていものすごい確信をもって意見の違う相手を強く攻撃したりする。
by. 桜井章一氏
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それよりも智恵さえあれば、
知識は必要最低限で十分だと思っている。
一瞬も定まることなく、変化してやまない世界を感覚でとらえ、
素早く対応していくのが智恵なのだが、
知識に依存しすぎるとこの智恵は身につかない。
by. 桜井章一氏
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知識という定まったものばかりを求め、
確信を持つほど、男はやわになる。
私は定まらない混沌とした世界で、
いつまでも泳ぎ続けようと思う。
by. 桜井章一氏
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人間には「不安の遺伝子」が組み込まれていると私は思っている。
不安は人の遺伝子に組み込まれている感情なのである。
だから、心から不安を取り除こうと思っても、
それは不可能な相談なのだ。
by. 桜井章一氏
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不安というものはそこから逃げようとすると、
一層膨らむものだ。
むしろ不安はその懐へ飛び込むような気持ちでいるといい。
それが不安に過度に囚われずにすむ一番の方法だ。
不安は敵でなく、味方なのだから。
by. 桜井章一氏
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私がもっとも刺激を受けるものがあるとすれば、
それは自然である。
だが私は、禁欲という、
欲望を自分のなかで抑える感覚が好きではない。
by. 桜井章一氏
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欲望は禁じるというより、
「律する」という感覚でやってきたからだ。
欲望を無理に抑えると他の大事なものまで
一緒に抑えられるような気がするのだ。
by. 桜井章一氏
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禁欲というのはどこかいびつな結果をもたらすことがある。
禁欲とは欲望の全否定に向かう行為だが、
人はしょせん自分の欲望をそのように制限することができないのだ。
by. 桜井章一氏
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だが、「律する」という気持ちであれば、
欲望の全否定ということにはならない。
「律する」のであれば、
ほどほどに加減のいいところで抑えようというバランス感覚が働く。
by. 桜井章一氏
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仮に誘惑が押し売りにきても、
「間に合ってます」という感覚になってくる。
禁じ方が強すぎると、穴を埋めるどころか、
その上に新しい山をつくりかねない。
by. 桜井章一氏
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よい誘惑であろうと、そうでない誘惑であろうと、
いつも自分を「律する」感覚でいれば、
「誘惑に負ける」ことにはならないのである。
「絶対」がよくないのならば、どういう感覚がいいのか?
それは「だいたい」というアバウトな感覚である。
by. 桜井章一氏
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