■すこやかな生き方のすすめ -廣済堂-
人として生きるということは、自分が自然界の無数の生き物とともにあることを感じることです。そこにこそ、生きる根っこがあると思うんです
まだ、子どもが小さかった時、
女房が重い病気にかかりましてね、
医者から「覚悟をしてください」
なんていう状況になった時にね、
幼い子を不憫に思いましてね、
「私の命をくれてやるから、女房を助けてくれえー!」
って何かに祈ったんです。
何に祈ったか、
わかりません、
とにかく、
自分の命を差し出して、
勝負したんですね。
「この勝負に負けたら、私は雀鬼じゃねえや」
って。
絶対、勝ってやる。
女房の命を私の命と交換で守ってやるって。
by. 桜井章一氏
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ええ、そしたら、
女房が息を吹き返した。
勝負に勝ったんです。
私の命は、
その時いったん差し出したんですから、
いつでも取られてもいいんです。
押し売りか、
ヤクザかと思って、
構えて出て行ったら、
法務省から
「裁判で差し押さえの判決が出ましたんで、来ました」
って。
by. 桜井章一氏
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「何の裁判だ」って聞いたら、
女房の実家のお母さんとお姉さんの借金の保証人に女房がなっているって言うんです。
「ああ、そうかい」
って開き直りましたね。
差し押さえでもなんでもしなさいよって感じでしたね。
やっぱり、そいつの女房が子どもの時に、
欲しいものを買ってもらえなかったという「飢え」が、
こういう時に出てきてしまうんですね。
by. 桜井章一氏
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私だって、彼女に高価な指輪なんかあげてますけど、
当然、もう、売ってしまっているか、
誰かに気前よくあげてしまっているでしょうね。
しょうがないんですよ、
そういう女として生まれ、
育ってきてしまったんだから。
離婚理由も性格の不一致だとか、
私に言わせれば、
「なんでそんなことで別れてしまうんだろう」
ということばかりですよ。
男と女が、お互いに期待したり、
夢を抱いたりすれば、
それがかなわなければ、
失望するに決まっていますよ。
by. 桜井章一氏
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私の場合は、
さっきの話でおわかりのように、
女房に対して私は最初から何も期待しなかったでしょ。
いや、期待していないどころか、
はじめからあきらめている。
やんちゃで、
どうしようもない娘だけど、
自分で選んだんだから、
しかたがないと思いましたよ。
よく、良い伴侶とか言うけど、
私は、逆に良い伴侶を持っていたとしたら、
いまの私ではなかったかなと思いますね。
by. 桜井章一氏
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つまり、男と女が結婚するということは、
お互いにそういう伴侶だから、
いまの私があるとお互いに思えばいいということだと思う。
それは、決して不幸なことではないということですよ。
つまり、地獄のような生活のなかにも、
宝物が手に入るということでしょう。
愛や思いやりや優しさ、
もちろんお金とかそういうものを含めて、
それすらもたからないことですよ。
by. 桜井章一氏
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たからないということは、
ずるをしないこと。
ごまかさないこと。
すりかえないこと。
ほしがらないこと。
そして、あきらめることですよ。
by. 桜井章一氏
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どうせなら、この身を自然に返したいと思っている。
私たち人類は、
これまで自然にさんざん迷惑をかけてきたし、
自然の恵みをいただいているんですから、
自分の身を自然に差し出してもいいと思っているんです。
人生骨折ったということは、
苦労したっていうことでしょ。
だから、まず肉体の骨を折ってみればわかるっていうものですよ。
by. 桜井章一氏
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人生のなかの痛みっていうのもわかるし、
痛い時には何ができるかとか。
身をもって知るってことかな。
要は、健康にかぎらず、
等身大で自分をとらえろということです。
私が乗ったバスは予定より少し遅れて着いたので、
襲撃に遭わなかったわけだけど、
私は必死で降りようと思ったんです。
by. 桜井章一氏
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ええ、「この日本人の団体は俺が守る」って、
思いましたからね。
みんなを逃したあと、
撃たれるなら私だなって思ってましたから。
私は、このツアーを組んだ旅行会社を怒りましたね。
もともとテロの国だというのなら、
こっちも覚悟があるけど、
ファラオの神秘を訪ねてなんていうのどかな旅行プランで、
行ってみたら銃撃されたなんて、
こんなひどいツアーがあるかって。
by. 桜井章一氏
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「お前らの商売、やり方が汚えよ」
って言ってやりましたよ。
もうちょっと早く現地に着けば、
ひとりやふたりと戦えたなって、
いまでも思いますから。
皆さん、
自分の身は自分で守れえばいいんです。
助けに行くと言っても、
それは責任感じゃないですよ。
by. 桜井章一氏
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私の場合、体が勝手に動くんですね。
どうせ助けるなら、
二、三人抱きかかえて逃げたいじゃないですか。
これから、どんどん体力は衰え、
結局は誰も救えなくなる。
人間の根源は、
もともと大変に汚いものなんですよ。
by. 桜井章一氏
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そうなんだ、ばななさんね、
人間の根源ってね、
暴君ネロなんですよ。
同じ日本人でも、
生きるためにはなんでもするんです。
それが人間なんだと思わせられてしまっている。
たとえば、ここから岩手まで歩いて行けということになったら大変なことですけど、
人間はアフリカから歩いて世界に出ていったんです。
by. 桜井章一氏
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旅行という概念は、
そこから考えないといけないし、
ほかの地域を見たいという好奇心も、
その概念から生まれているわけでしょ。
だから、ちょっと元にもどれば何かが生まれてくるんですよ。
だから、私はなにか根源的にわからないことがあると、
いつも元に戻って考えることにしているんです。
ところがね、
自然界には残虐さが感じられないんです。
by. 桜井章一氏
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子どもが生まれた時がそうでしょ。
最初、五体満足で健康ならよかったでしょ。
そのうちに、頭がいいとか悪いとか、
塾に行かせたり、
一流と呼ばれる学校に入学させようとしたりしますからね。
実は、この世の中、
不幸な人はたくさんいるんです。
私はね、
ホームレスの人の気持ちをもっと大事にしなければいけないと思うんです。
by. 桜井章一氏
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だって、彼らは少なくとも、
世間の人に迷惑をかけたくないという気持ちが強いんですからね。
だから、黙って死んでいくんです。
まるで、野良猫がいつの間にかいなくなったと思ったら、
隠れて死んでいたというのと同じですね。
ばななさんもご存知のように、
確かに現代は生きて行くのに難しい時代だとは思います。
by. 桜井章一氏
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それは、人間関係が複雑に入り組んでいるからなんです。
そうしたなかで、
忘れてはならないことは、
人はすべて、
被害者であると同時に、
加害者であるという側面を持っているということ。
つまり、どんな立場にいようとも
決して無償できれいな身ではないということです。
そして、
「人が人として生きることは、それだけですごい」
ということに気づけば、
もう十分に生きていると言えます。
by. 桜井章一氏
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人として生きるということは、
自分が自然界の無数の生き物とともにあることを感じることです。
そこにこそ、
生きる根っこがあると思うんです。
みんな、お金の豊かさを求めているけれど、
私はそれは決して恵まれていないな、
と思っているんです。
最終的には人は自然のなかに入って、
自然の恵みをもらうべき存在なんだと思うんです。
by. 桜井章一氏
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大自然の前では、
人の世界ではすごいと言われる人でも、
大したことはないですからね。
ばななさん、生きることも、
死ぬことも、
自然から学ぶといいですよ。
小津安二郎監督の名作
『東京物語』という映画である。
周吉、とみの老夫婦が尾道から東京にやって来た。
by. 桜井章一氏
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老夫婦は、
それぞれの家を訪ねたが、
長男夫婦(医者)も長女夫婦(美容院を経営)も、
「ひょっとしたら、老後の面倒をみなければならないのか」
と疑心暗鬼に陥り、
一様に両親の上京に困惑していた。
そのなかで、ただ、ひとりだけ、
夫が死んだため未亡人になり、
貧しいアパートでひとりで暮らしていた次男の嫁だけが、
ふたりを心から歓迎してくれた。
「お父さん、みんな、わしらが来たんで困っとるみたいやね。
田舎に帰りましょうか」
「ほうか、じゃあ、そうしよう」
by. 桜井章一氏
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老夫婦は故郷に帰る。
それから、数日後「ハハキトク」
の電報が息子たちに届き、
母親は亡くなってしまう……
という筋だ。
この老夫婦の姿に、
私は感動する。
なぜなら、彼らは決して「たかろう」
としなかったからだ。
by. 桜井章一氏
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ただ、素直に、
娘や息子たちに会いたくて、
はるばるやって来た。
それなのに、
子どもたちは自分の現在の暮らしのことばかり考え、
まったく老夫婦の気持ちを察しようとしなかった。
しかも「たかられる」と思った子どもたちは、
地方から出てきて、
それなりに東京で成功した人たち、
それに比べて、
東京生まれで東京育ちの次男の嫁は
「たからない」。
東京という所は、
成功を求める地方出身者の町でもある。
by. 桜井章一氏
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いまから約六十年も前に、
小津監督はこの映画で人間の本質を見抜いたのだ。
そして、いずれ、
こういう日本になっていくということを予言したとも思えた。
by. 桜井章一氏
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