私にとってトラブルやアクシデントといったものは「あって当然」の存在である。間合いを上手にとるには、普段から「間に合う」ことを心がけておくことも大切だ

■修羅場が人を磨く -宝島社-

私にとってトラブルやアクシデントといったものは「あって当然」の存在である。間合いを上手にとるには、普段から「間に合う」ことを心がけておくことも大切だ

K組長が金バッチと日本刀の男に言う。
「客人に手荒なマネをしちゃいけねえよ」

社長とK組長の間で話はついているようだった。

「やらなければ殺すぞ」
という私自身へ脅しならば
「ああ、そうですか」
で済むのだが、
私の家族にまで脅迫まがいのプレッシャーをかけてくる組織があり、
そうなると私も黙っていることはできない。

「もし、家族に手を出したら、俺はお前らと死ねる」。


by. 桜井章一氏

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そう言い残し、
私はホテルを後にした。

家に帰ると妻が、
日中に中年男性がやって来て
「お子さんにどうぞ」と言い、
ジュースの詰め合わせを持ってきた、
というのだ。

彼らは私が依頼を断ることまで予測して動いてきたのだ。

代打ちを始めた当初はいろんな強者と対局ができて面白かったが、
後半になってくると先程の話のように裏の社会の汚さに嫌気のさしてくることが多くなってきた。


by. 桜井章一氏

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裏の世界は見えない部分がたくさんある。

そして知らないなら、
知らないままでいたほうがいいことも多い。

「裏のことなんてどうでもいいんです。
その代わり、競走馬のように走るだけは走りますよ」。

私は常にそういうスタンスだった。


by. 桜井章一氏

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もし私が裏の世界にまで首を突っ込み、
知らなくていいことまで知ったとしたら、
今こうして生きていなかったかもしれない。

この世には、
修羅場とはまた違った次元の世界が存在するのだ。

私が幾多の脅しに屈しなかったのは、
自分の持ち場、
領域は絶対に侵されたくないという気持ちがあったからである。

たとえそこで殺されても、
「ここだけは死守する」
「譲れない」という思い。


by. 桜井章一氏

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当時の私は
「麻雀で負けるくらいなら殺されてほうがいい」
と本気で思っていた。

「もし麻雀で負けたら死のう」
と本気で考えていた時期があった。

しかし当時の私は麻雀以外の勝負事ならともかく、
麻雀だけは負けたくなかった。

その時期だけ、
そういう気持ちの「ゾーン」
のようなものに入り込んでいた。


by. 桜井章一氏

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しかし、若かった頃の私は、
そういった突発的な出来事に遭遇することを楽しみにしていた。

家から一歩外に出たら
「さあ、今日は何があるかな?」
とワクワクし、
ピンチやトラブルがやってくると
「おー、来た来た!」
とそれを面白がるようなところがあった。

私にとってトラブルやアクシデントといったものは
「あって当然」の存在である。

「あって当然」
「あって当たり前」
という覚悟があるのとないのとでは、
アクシデントが起こった時の対処は随分と変わってくる。


by. 桜井章一氏

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けれども肝っ玉が据わったように見えるのは、
修羅場を数多く経験したということ以外に、
突発的な出来事に対する覚悟や備えがあったからである。

トラブルやアクシデントをマイナスと捉え、
嫌悪したり敬遠するのではなく、
「自分を成長させてくれるもの」
と思ってそれに備えておく。

何か事が起こったら
「お、これでまた自分が成長できるぞ」
と思うだけでいい。

それによって人間の可能性という枠はどんどん広がっていくのだ。


by. 桜井章一氏

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修羅場を経験することによって、
人間の何が磨かれるのかというと、
それは強さというものかもしれない。

確かに言えるのは、
修羅場を多く体験することで、
修羅場に対する「慣れ」
が出てくるということだろう。

つまり修羅場を経験すれば、
その前の時点の自分より確実に心は動じなくなる。

泰然自若とした精神が育まれていく。


by. 桜井章一氏

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「なんであんな状況になっても落ち着いていられるの?」
と聞かれたが、
私はどうやれば最善の対処法をとれるか、
瞬時に判断し、
それに則って動いただけである。

突然のアクシデントに遭遇すると、
たいていの人は慌てふためき、
パニックに陥ってしまう。

しかしそんな時こそ、
一瞬の間を置く必要がある。

パニックになりそうな時こそ、
少しふーっと息を吐き、
一呼吸置いてやる。


by. 桜井章一氏

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そうするとその後の対処法や解決策がぱっと見えてくる時がある。

間合いがとれれば冷静にもなれる。

間合いを上手にとるには、
普段から「間に合う」
ことを心がけておくことも大切だ。

人としての強さを感じるさせる人は、
まわりに漂う空気が違う。

何か気配を察すればさっと動けるよう、
五感を常に働かせていながらも、
端から視るととても静かなのである。

とはいっても、
20年間代打ちを続けた中で本当の強さを感じたのは2,3人である。


by. 桜井章一氏

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彼らは初めて会った瞬間から
「ただ者じゃない」
という何かを漂わせていた。

何もせずとも、
その佇まいだけで他を圧倒できる迫力を持った人だった。

私は賢さんの麻雀が好きだった。

流れるような麻雀を打ち、
牌が生き生きとしていた。


by. 桜井章一氏

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片手とはいえ、
賢さんは私から見て惚れ惚れするような、
職人気質の麻雀を打つ人だった。

賢さんの麻雀と私の麻雀は根底で通じるものがあったのだろう。

けれども賢さんの「男っぽさ」は、
腕を無くしても霞むことはなかった。

宿命的に体を張って生きている人には
「男」の香りが漂っている。


by. 桜井章一氏

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賢さんの麻雀は体を張って打ってくるから威圧感がある。

頭で打つ麻雀はたかが知れているが、
体を張って打つ麻雀は底知れぬ強さを秘めているものなのだ。

修羅場に生きた、というより、
「修羅場の中で生きるべく定められた」
人だったように思う。

世の中にはいろんな役割があり、
それぞれが定められたポストでその力を発揮する。


by. 桜井章一氏

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そんな中で賢さんは修羅場という役割を課せられた人だったのかもしれない。

とても静かな人だった。

強い人というのは共通するある種の静謐さを湛えているのである。

代打ちとして勝負に勝ち続ける中で、
私は得ることの裏で決定的に失われるものがあることに気がついた。


by. 桜井章一氏

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