お金を前にしたときの人間の本性は少しも変わっていない。お金を得るために自分の心を汚すようなことは絶対にやめたほうがいい

■きみに努力はいらない -大和書房-

お金を前にしたときの人間の本性は少しも変わっていない。お金を得るために自分の心を汚すようなことは絶対にやめたほうがいい

20代だった私も、
やはりお金のことを考える時期があった。

その当時の私の考えを短くまとめると、
「お金って汚いものだな」
というものだった。

さすがに70歳を過ぎた今となっては、
お金の大切さを全否定するつもりはないが、
お金は人生の中でそれほど重要なものではないという考えは変わっていない。

そういう考え方がどこで身についたかというと、
やはり子どものころにお金の問題で苦しんでいる大人をたくさん見てきたからだろう。


by. 桜井章一氏

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若い人たちは知る由もないだろうが、
「ニコヨン」なんて言葉がはやった時代だった。

ニコヨンというのは、
当時の日雇い労働者を指す隠語で、
1日働いて百円玉が2枚に十円玉が4枚しかもらえないことから、
そう呼ばれていた。

当時はまだ建設機械がないため、
基本的に人力での作業が行われていた。

杭打ち作業をするのも、
労働者たちがロープを引っ張って重りを持ち上げ、
それを落としながら作業を進めていく。


by. 桜井章一氏

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家の中にいても、
労働者たちの「エーンヤコラ」
という掛け声がよく聞こえてきたものだ。

労働者の中には女の人たちもおり、
男たちに混じって実に大変そうに力作業を行っていた。

そんな姿を見ていると、
幼いながらもお金を稼ぐことの苦労を感じたものだ。

一所懸命に肉体労働をして、
やっと暮らしているような人たちがいる一方で、
人をだましてでも金儲けをしてやろうという連中もたくさんいた。


by. 桜井章一氏

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枡に米を入れて量っているふりをしているが、
よく見ていると量る直前に枡の底に薄いセルロイドをサッと入れ、
「1合、2合、3合……」
って数えていくのだ。

こうして分量をごまかす連中が大勢いた。

まだ子どもだった私だが、
なぜかそういったインチキをすぐに見破ることができ、
そのたびに彼らの顔をにらみつけたものだ。

彼ら(布地を売りに来る人たち)の中には、
物差しの尺に細工をし、
少しでも長さをごまかそうとするようなインチキをするのがいた。


by. 桜井章一氏

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不思議なことに、
こういうインチキに騙されてしまう人たちが実に多かったのだ。

家事が忙しくて相手のしぐさをちゃんと見ていないのか、
それとも相手を信じ切ってしまっているのか、
ほとんどの人たちが体よく騙されていた。

なぜ私が彼らのインチキを見破れたかというと、
やり取りをよく見ているうちに、
彼らの動きに不自然なところがあることに気づいたからだ。

彼らを見ているうちに、
「お金を得ることはこれほどまでに汚いものなのか」
と思うようになっていったのだ。


by. 桜井章一氏

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その思いは変わることなく、
20代のころには
「お金を得ることは汚いことだ」
と確信するようになった。

その後、30代になってからは、
お金の多寡で自分の価値を計られたくないという気持ちが強くなっていく。

「金では自分の魂は売らないぞ」
「オレは、金では動かないからな」

30代のころの私は、
こんなふうに考えて、
自分の判断基準からお金ということも完全に排除するような生活を送っていたのだ。


by. 桜井章一氏

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だが、お金を前にしたときの人間の本性は少しも変わっていない。

残念なことだが、
人はお金によって豹変し、
他人を騙すようなことも平気でやってのけるようになるのだ。

生きていくのにお金が必要なのはわかる。

だが、お金を得るために自分の心を汚すようなことは絶対にやめたほうがいい。

自分の心を汚した代償は、
いつか必ず大きなものとなって自分を苦しめることになるだろう。

どうしても必要なものがあれば、
麻雀で勝負してお金を稼ぐ。


by. 桜井章一氏

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こうなるともう狩猟民族のようなもので、
腹が減れば町へ出て”狩り”をするような感覚だった。

必要なお金はいつでも手に入るという状況を整えた私だが、
むやみに稼ぐことだけは控えるようにした。

私にとっての”狩り”は麻雀で勝つことだったが、
その世界にはライオンやハイエナのような獰猛で貪欲な人間がたくさんいた。

そういう人たちを相手にするわけだから、
気を付けていないと自分が狩りの標的にされることがあった。


by. 桜井章一氏

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大学時代に相当入れ込んだおかげで、
私の麻雀の腕はかなりのものだった。

ただし、麻雀で実際にお金を稼ぐとなると、
物事はそう単純に進まない場合もある。

やばい人間を相手にヘタに勝ちすぎたりすると、
因縁をつけられることが頻繁に起きたのだ。

だが、私は常に毅然とした態度を取ることを自分に課していた。


by. 桜井章一氏

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脅し文句を浴びせかけられても、
「はい、上がりです」
と宣言し、
きっちりと点棒を回収した。

別に理不尽なことを言っているわけではない。

ルールに従って勝ったのだから、
こちら側にはやましいことはなにもないのだ。

こんな調子だから、
最後には必ず、
「てめぇ、表に出ろ」
という騒ぎになるのだった。


by. 桜井章一氏

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束になってかかって来られれば、
私に勝ち目は一切ない。

袋叩きになることを覚悟しなくてはならなかった。

だからと言って、
こちらは一歩も引くつもりはなかった。

そこ(裏通り)に引っ張りだされると、
数人の相手に囲まれる。


by. 桜井章一氏

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複数を相手にして勝てる見込みはないが、
ここで逃げるわけにはいかない。

一度、妥協して負ける姿を見せてしまえば、
次回からはずっと負けを強いられることになる。

それだけは絶対に避けなければならなかった。
そんなとき、私は最初だけ下手に出るようにしていた。

「すみませんけど、せめて1対1にしてくれませんか。
それと、シメられているのを見られるのはカッコ悪いんで、
私たち2人の他に誰もいないところに連れていってください」


by. 桜井章一氏

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こう言うと、
相手もどうにか情けをかけてくれて、
路地のさらに奥のほうへと連れていかれることになる。

こうなれば、しめたものだった。

1対1であれば、
勝つ自信があったからだ。

相手は絶対負けるわけないと思って、
私に向かってくる。


by. 桜井章一氏

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そんな相手をうまくいなし、
素早く勝負を決めていった。

相手を倒す際には、
なるべく顔を痛めつけないように気をつかった。

向こうにもメンツというものがある。

素人相手に負けたとなれば、
仲間から何を言われるかわからない。


by. 桜井章一氏

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私は相手のことを考えて、
鼻血が出たり、
顔にアザが残らないように気をつけながら相手を制圧していった。

簡単な狩りではなく、
いつも傷だらけだった。

気を抜けば、
命を失ってしまうことも十分あり得るような状況で生きてきたのだ。

ただし、時には自分の精神を追い詰め、
極限の状態に身を置いてみることは大切なことだとは思う。


by. 桜井章一氏

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そうした状況の中で、
果たして自分はどれだけ正しい判断ができるのか、
自分を試してみるのである。

最初のうちはパニックになってしまうことがあっても、
人間というのは強いもので、
いつしか能力が発揮されるようになり、
切迫した状況からも脱却できるようになるものだ。

命の危険があるようなことは避けてしかるべきだが、
しっかりとした安全を確保した上で、
自分自身を”危険な狩りの場”
に放り込んでみてはどうだろうか。


by. 桜井章一氏

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