そうした装いを見破り、私はその下に隠れた真の姿に目を向けるようにしている。自分自身に嘘をついて、物事をごまかそうとしないことである

■きみに努力はいらない -大和書房-

そうした装いを見破り、私はその下に隠れた真の姿に目を向けるようにしている。自分自身に嘘をついて、物事をごまかそうとしないことである

特に意識をして言い当てているわけではないのだが、
自分の中にある感覚が働いて、
自然とわかってしまうのだ。

人の様子にはたくさんの情報が詰まっていて、
見ているだけでいろいろなことがつかめてくる。

前の日に何か悪いことをした人も、
見ていればすぐにわかってくる。

人は誰もが外見を装っているものだ。


by. 桜井章一氏

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そうした装いを見破り、
私はその下に隠れた真の姿に目を向けるようにしている。

手始めとしてできることは、
自分自身に嘘をついて、
物事をごまかそうとしないことである。

いつでも本心をさらけ出し、
裸になっているような気持ちで生きることだ。

そうした生き方を自らがすることで、
相手の素の姿も見ることができるようになる。


by. 桜井章一氏

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学歴や仕事、
持っているモノ、
住んでいる家といったものは、
自分の感覚を磨いてく際には一切役に立たない。

これらの要素は人の心を濁らせることが多いので、
頭の中から一度すべて消し去ってみることだ。

そうすることによって、
自分の中に眠っている感覚を研ぎ澄ましていくことが可能になる。

赤ん坊を見てほしい。


by. 桜井章一氏

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彼らは、
自分の心をオブラートで隠そうとせず、
裸の状態で生きている。

動きたいと思えばハイハイをして動き、
さらに遠くまで行きたいと思えばつかまり立ちを覚え、
少しでも行動範囲を広げようと成長していく。

こうした変化は、
頭で計算した上で起こしているのではなく、
肉体が自然に求め、
表に出てきているのだ。

大人になると、
多くの人たちがこうした本能的な成長力をなくしてしまう。


by. 桜井章一氏

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いつでも肉体や精神は変化したいと感じているのに、
何もしないままボーッと1日を過ごしてしまったり、
自分の心の動きを蔑ろにしてしまう。

こうなると、元々人間として持っていた能力はどんどん弱くなっていく。

文明が発達する前の人間は、
今を生きる私たちよりも鋭い感覚を持ち合わせていたのではないだろうか。

ところが、徐々に人間社会が進歩していくうちに、
私たちの多くが元々備えていた優れた感覚を失っていったように思う。


by. 桜井章一氏

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人間が持っている本能を呼び覚まし、
物事に対してもっと敏感になるべきだ。

そうすることによって自分の感覚は磨かれていき、
本質的なことが見えてくるようになる。

本当のこと、
つまり真理に直面すると、
不安感にとらわれてしまう人がいる。

これは真理であるから目を背けようとしても無駄であり、
いくらあがこうが死は必ず訪れる。


by. 桜井章一氏

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広葉樹は、
秋になると枝に茂らせた葉を散らしていく。

さらに冬になり、
それら樹木の下の土に触れてみると、
落ち葉によって土壌が柔らかくなっているのがわかるだろう。

その土壌は、
小さな生物たちには欠かせない環境となる。

枯れ葉となって「死」
を迎えたかに見えた葉だが、
その死は決して無駄ではなく、
他者のためになっているのだ。


by. 桜井章一氏

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毎年目にする何の変哲もない現象だが、
自然界のサイクルはまさに真理を表していると思う。

こうしたことを肌で感じ、
自分も自然界の大きな流れの一部であるという認識をもつことができれば、
「死」という真理を前向きに受け止めることができ、
闇雲に不安にとらわれることもなくなるはずだ。

「死」についてもそうだが、
何かを考える際には柔軟性を失ってはいけない。

見方を変えればまったく違った解釈ができるからだ。


by. 桜井章一氏

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「堅い」という表現は場合によっては
「真面目」と同義語とされ、
褒め言葉として使われがちだが、
堅さばかりで柔軟性を失った人間は、
逆境に弱いという捉え方をすることも可能だ。

歳を取っていくにつれ、
人は柔軟性を失い、
固定観念に縛られがちになる。

私たちはほとんどが固定された社会の中で生きているのだから、
それはそれで仕方がないことなのかもしれない。

そもそも生まれたときから固定された名前を付けられ、
引っ越すことはあっても基本的には固定された住所に留まって育っていくのだ。


by. 桜井章一氏

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こんな環境で生きていれば、
固定化されていくのは当然だ。

誰もがこうした環境の中で生きているのだが、
自分が固定化された社会で生かされているという自覚を持っているか、
それともそれにまったく気がついていないかの違いで大きな差が出てくる。

柔軟性や融通性を保ちたいのであれば、
パソコンやスマートフォンのようなデジタル機器に過度に依存しないことだ。

最新の人工物の象徴であるデジタル機器は、
固定化社会が生み出した結晶のようなものと言える。


by. 桜井章一氏

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便利ではあるが、
これらに頼りすぎると自分の頭で考える機会が激減し、
思考の中から柔軟性や融通性が失われていく。

すでに70歳を過ぎた私から言えるのは、
堅くて真面目はつまらないということだ。

そもそもつまらない人間の周りには、
人は集まってこない。

人との触れ合いが欠如してしまえば、
楽しく豊かな人生を送ることもままならない。


by. 桜井章一氏

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つまらない人間にならないように、
柔軟性と融通性を失わないように心掛けることが肝心だ。

大人より、
近所の子どもから認められるほうが、
はるかに価値のあることだ。

仮に危険があったとしても、
そのリスクを抱え込まない限り、
相手との信頼感は醸成されない。

大げさな話だが、
命がかかったときにこそ、
お互いに信用し、
協力しようとするものなのだ。


by. 桜井章一氏

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逆に言うと、
安全な状況からは信頼は生まれない。

だが、壊れてしまったものは仕方がない。

すぐに自分の子ども時代を思い出し、
「おまえね、派手にやっちゃったけどよ、
じいじは正直言って、
小さいころおまえの100倍ぐらい物を壊したことがあるからよ」
と言い、
相手が萎縮しないように気を付けている。

「人間にはミスがつきもんだ。
わかるか?
おまえだってミスをするんだから、
友だちがミスをしても責めちゃダメだぞ」


by. 桜井章一氏

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「でもな、人として卑怯なことやずるいことは絶対にやっちゃダメだ。
ミスは仕方ないけど、
それをごまかそうとしたら許されないからな」

こんな調子で理路整然と話をすれば、
子どもはしっかりと理解してくれるものだ。

そして、頭ごなしに怒られることがないという安心感を与えることができれば、
自分のやったことを正直に言ってくれるようになる。

「そうか。
しょうがないな。
でもな、じいじなんか、
学校の先生と親に毎日叱られたよ」

子どもの話に合わせてこんな返事をすると、
面白がって話を聞くようになる。


by. 桜井章一氏

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